一昨日(1月14日)、北朝鮮が今年初めての弾道ミサイルを日本海に向けて発射しました。昨年には軍事偵察衛星も打ち上げ、地球の周回軌道への投入に成功したというニュースは耳に新しいかと思います。
人工衛星投入用のロケットでみるとき、日本ではH2(a,b)型ロケットの成功率が高く、また、アメリカなどでは民間ロケットの商業化も進み、宇宙関連事業は着実に進化を遂げています。しかし一方で、旧ソビエト連邦が1957年に人類初の人工衛星を打ち上げてから70年近く経ちますが、まだ人類は月にまでしか行けていません。コンピューターやAI、医学、遺伝子学の進化に比べれば大きく遅れていると言わざるを得ません。これはひとえに「在来生物がその惑星を出て宇宙に行く」という行為がどれほど難しいかを物語っています。
さて、例えばまず、そもそも地球の重力を脱して宇宙に飛び出すにはどれほどのスピードが必要なのでしょうか(質量が有ろうと無かろうと重力を脱するのは速度の問題です。もちろん質量があればあるほど重力が働くので、加速するにはより大きなエネルギーが必要になってきます)。
重力からの脱出速度でよく目安にされるのは、第一宇宙速度(地球を回る円軌道に投入できる速度)【秒速約7.9㎞(=時速28,400㎞・音速(マッハ1)の23倍以上)】、第二宇宙速度(地球の重力圏を脱する最小速度)【秒速約11.2㎞(=時速40,300㎞・音速の33倍弱)】、第三宇宙速度(太陽系を脱出できる最小速度)【秒速約16.7㎞(=時速60,100㎞・音速の約49倍)】です。空気抵抗などの様々な摩擦を度外視し、純粋に重力の影響だけを考えても、地球から放り出す物体に各目的の運動をさせるには、初速でこれだけのスピードが必要になってきます。実際にかつて人類が宇宙に打ち上げた物体で、現時点において太陽系を脱出する軌道を取っているものはボイジャー1号をはじめ5個しかないとのこと。しかもこれらはスイングバイ(惑星近辺通過時にその重力を利用する方法)による加速で脱出速度を得ているということです。ちなみに、物質(質量をもたないものも含め)が太陽の重力圏から抜け出すには秒速およそ617.5㎞(1秒で北海道を余裕で横断できるスピード)以上の速度で太陽表面から飛び出さなければなりません。ロケットほどの質量のある物体をそのスピードまで加速させることは今の人類には至難の業です。宇宙には太陽より重い星が数えきれないほどありますので、人類が太陽系外に出てほかの恒星系へ旅をするのはまだまだ先の話になりそうです。さらに余談ですが、質量がゼロである光の速度(我々の生活する四次元時空で最速)は秒速約299,792㎞ですが、「重力の化け物」と呼ばれるブラックホールでは、或る境界面(事象の地平線)を越えてその中心に近づいてしまうと、この光の速度でさえその重力圏から脱出できなくなってしまいます。要するにこれが、ブラックホールを我々が視認できない理由です。それにしても、光どころか空間や時間すらも飲み込んでしまう(光が飲み込まれるということは必然的に空間と時間も飲み込まれるということなのでしょうが)、四次元時空の特異点であるブラックホールという天体は、本当に不思議な存在ですよね(果たして「存在」という言葉を軽々しく使っていいのかどうかも迷うところです)。
さて、余談ばかりが長くなりましたが、SF映画やSFアニメみたいに人類が惑星間旅行するようになるのはいつのことでしょうか。他の惑星に移住できる日は来るのでしょうか。いずれにせよ新しいフロンティアでも戦争するのだけは避けてほしいものです。