東日本大震災発生から14年目を迎えました。
3月8日にNHKラジオ第一(AM)で放送された「文芸選評」のテーマは「東日本大震災を詠む」でした。パーソナリティーは石井かおるアナウンサー、選者は梶原さい子さん。入選作品含め東日本大震災にまつわるいくつかの短歌が紹介されておりましたので、僭越ですが、その中で私が深く印象に残った作品をいくつか掲載したいと思います。
・一生がたちまち過ぎてゆくことを励みに暮らすひとのありけり(梶原さい子さん)
・あの時の記憶根深く刻まれて微かな揺れで強張る身体(宮城県 45歳)
・「せつこ」と妻の名呼べど復興の重機の音に消されて届かず(福島県 70歳)
・擬餌針をせっせと作る十三の君は津波のあとに生まれて(東京都 60代)
・あの日から今日までずっと避難民空は故郷に続いているか(福島県 70代)
・今日だけは後ろを向いていいですかエールはちゃんと聞こえてるので(兵庫県 60代)
・教室は災後生まれに満ち溢れ私を語り部へと押し上げる(北海道 29歳)
・三月を私が詠んでいいのかなでもペンを持つ忘れないため(長野県 50代)
ある人は昨日のことのように語り、ある人は時の移ろいの中で慨嘆し、ある人は己のよすがとします。被災した人はもちろんのこと、直接被災しなかった人も14年前のあのできごとをトラウマのように抱えています。今生きている私たちはどのようにあがいても大震災の時間軸から逸脱することも目を逸らすこともできません。それは「後世に語り継ぐ責務を負っている」と言われているような気もします。「語り」をはじめとする短歌、日記、記録、研究、論文、小説といった多岐にわたる表現手段を持つ現代人は、その多くが過去から未来へと歴史を紡ぐ「語り部」であり「吟遊詩人」と言えるのではないでしょうか。

