昨日の北海道新聞の記事によれば、2023年の北海道の建設業倒産件数が前年の3倍にのぼっています(帝国データバンク調べ)。倒産の主な要因としては、資材の高騰と人材の不足とで受注ができず、事業の継続が困難になったとのこと。既存の事業継承問題に追い打ちをかけている状況といえます。
今まで安価だった海外からの資材は、歯止めのかからない円安により高騰を続け、これに伴い身の回りの物価も上昇、現状の給料では人が雇えなくなる、という悪循環に陥っています。同日の記事には、今春闘では労使間合意により賃上げが確実だろう旨も述べられていましたが、現今の経済状況の変化にはかなりのスピード感があり、物価高(インフレーション)が進んでいながら会社倒産などの景気減速も並行する、いわゆるスタグフレーションの兆候が肌で感じられるようになってきています(本来、インフレーションは好景気の時に起きます)。
景気の後退により日本の経済力が落ちていることは、GDP(ドル換算)がドイツに抜かれ世界第4位に転落するという報道からもわかります。私(田中)の記憶では、日本のGDPは1990年代後半くらいまでヨーロッパ圏(ECもしくはEU)に匹敵していたはずです。もちろん国や日銀はこのような状況に対処すべく施策を講じてはおりますが、特効薬がないのが現状です。経済対策は常に対症療法と言えます。
日本経済を停滞させる要因の一つとして、現在並びに将来の労働人口減少を引き起こしている「少子化」が挙げられます。政府は、少子化対策として出産や育児がしやすい環境を整える、また、労働人口確保のため外国人労働者に関する規制緩和を進めるなどの政策を打ち出してはいますが、日本の慣習や社会通念、労働慣行などの影響もあり、思うようにはいっていません。人口は国力を図る指標の一つでもあります。とりあえずの労働力確保のために生産部門を機械化するという方法もあり、実際にそうしている企業も多いですが、機械自体は消費者になりえないので、経済の発展を考えれば片翼飛行ということになります。結局当面のところは、「働き方改革」が推進されるなか労働の効率を上げ経済を回していかなければならないわけです。しかしながら、この「働き方改革」に関しては、多少の見直しと発展が必要になるのではないかと考えます。かつて私が地方議員の事務所に勤務していた頃、多くの中小企業の経営者の方から「働き方改革」への苦言をいただきました(与党議員だったので)。曰く「働き方改革は企業への一方的な押し付けだ。そもそも改革の対象者でもない経営者を縛り、経営者を縛るだけならまだしも、労働者だって必ずしも全員が納得しているわけではない。長時間働きたい労働者だっている。制度だけの運用は労使間の乖離を助長しかねない」というものでした。個人的には、働き方改革自体は歓迎すべきことだと思っています。しかし、コロナ禍を経て経済状況が顕著に悪化し始めている現在、「働き方と経営の仕方」を見直す必要はあると思います。まず手始めに、労使が同じ方向を目指せるような「働き方の意識改革」が重要なのかもしれません。