78年前の今日、日本はポツダム宣言を受諾、その無条件降伏により太平洋戦争及び第二次世界大戦が終結しました(正確には、ソ連の対日参戦により満州や樺太、千島等において依然戦闘行為は続いておりましたが)。
戦争終結に臨む昭和20(1945)年8月14日から15日にかけて、現在の皇居を中心にクーデター未遂事件が発生します。ノンフィクション作家の半藤一利が『日本のいちばん長い日』という作品の中でこの緊迫の24時間を描いています。様々な研究がなされた今日では事件の詳細に多少の異同もあるようですが、このルポルタージュはおおむね定説となっています。
『日本のいちばん長い日』は2度映画化されており、最初のものは俳優陣に笠智衆や三船敏郎を揃え1967年に制作されています。2015年の2度目の映画化の際は主要な配役を役所広司さんや松坂桃李さんなどで固め、全国で上映されました。私が観たのは2015年版のほうのみですが、とにかく松坂桃李さんの演技が非常に印象的でした。戦後生まれの私には当時の陸軍青年将校の心情などわかるべくもないのですが、松坂さん演じる青年将校からは軍人としての栄光、誇り、傲慢、悲哀がひしひしと伝わってきました。作中の人物がたまに胸中を吐露する形ですすむ書籍版『日本のいちばん長い日』よりもむしろ真に迫ってくるものがあります。
私(田中)は昭和45(1970)年に北海道の片田舎で生まれました。当時は、家も学校も汲み取り式便所が当たり前で、暖房は薪か石炭ストーブ、板垣退助の100円紙幣をまだ使用することができ、岩倉具視の500円札が普通に流通していた時代です。考えてみれば、その頃の日本は高度経済成長期を経てきていたとはいえ、戦後まだ25年しか経っていませんでした。「もはや『戦後』ではない」という言葉が耳に残っていたということは、〈「戦後」にいまだ縛られていた時代〉と言い換えることもできます。もちろん25年・四半世紀という歳月が長いのか短いのかという議論はあります。人生50年時代の25年と現今人生100年時代の25年とでは簡単に比較できるものではありません。しかし、例えば、明治改元の慶応4(1868)年から25年後の明治26(1893)年には、西郷隆盛と談判して江戸無血開城をなした勝海舟、官軍に最後まで抵抗し箱館戦争を繰り広げた榎本武揚、幕末京都を震え上がらせた新選組の斎藤一や永倉新八、最後の将軍徳川慶喜など、幕末にその名を馳せた多くの人物がまだ存命中でした。そう考えると25年という時間はやはり短いのかもしれません。ただ、戦後78年、物理的な25年という歳月からさらに50年以上が経過している今、世界中で戦争の影が見え始めたのは確かです。世界大戦の社会的記憶は着実に遠くなりつつあり、「戦後」という言葉は時代とともに色褪せています。