昨年ノーベル文学賞を受賞した韓国の作家ハン・ガンさんの2作品を読みました。
『菜食主義者』は韓国内最高峰の純文学作品に授与される〈李箱文学賞〉に輝き、各国語に翻訳された同作品はいくつかの外国の文学賞も受賞して、小説家ハン・ガンの名を世界に知らしめました。
『別れを告げない』は、現在ハン・ガンさんの作品の中では最高傑作との呼び声高く、ノーベル賞受賞のきっかけになったとする書評も見受けられます。
ネタバレを避けるため、ここではあらすじ等の内容に触れることはしませんが、とにかく2冊ともにとても面白く、傑作と呼ぶに相応しい作品でした。あくまでも個人の感想を述べさせていただきますと、ここ十数年来わたし(田中)が読んだどの芥川賞作品よりも引き込まれました。単純な面白さだけでいえば『菜食主義者』は群を抜き、あっという間に一冊を読み終えてしまいます。『別れを告げない』はその文章の巧みさと表現の美しさで読む者を小説世界へと誘います。そして、この2作品に共通して言えるのは翻訳が秀逸だということです(『菜食主義者』=「きむ ふな」さん訳/『別れを告げない』=「斎藤真理子」さん訳)。特に『別れを告げない』における方言の翻訳変換方法に関しては感心しきりで、それを過不足なく補う斎藤さんの言語感覚に舌を巻きました。確かに我々日本人にとって、ヨーロッパ言語やアラブ言語等の翻訳作品よりかは、日本語の親戚ともいえる韓国語作品のほうが原文の臨場感を楽しめるのかもしれません。そういう意味ではハン・ガンさんの表現作品は我々と近いところにあり(私がハン・ガンさんと同い年の同時代人ということもあるかもしれません)、作家の才能をより理解しやすいかとも思います。
彼女の本を1冊でも読むと、次の作品を読みたくなること請け合いです。
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