書評①

表題は、まるでプロ作家の本を評価するかのようなおこがましさですが、最近読んだものの中で私(田中)なりに感銘を受けたものを、今後ちょっとした機会に紹介していきたいと思います。

まずは、第170回直木賞を受賞した河﨑秋子さんの『ともぐい』。

直木賞を同時受賞した万城目学さんの『八月の御所グラウンド』、同じく第170回芥川賞を受賞した九段理江さんの『東京都同情塔』はまだ読んではいませんが、ここ数年の内で読んだ芥川賞、直木賞作品の中では最も私好みの小説でした。作家も小説舞台も北海道だから、という贔屓目を差し引いても群を抜いていました。読む人を物語に引き込んでいく筆力がすさまじく、そのあまりの筆力のために、この作品に抵抗を覚える人もいるかもしれません。河﨑さんが描く獣たち(人間も含め)の生々しい息遣いには、少々大げさかもしれませんが、行きとし生ける物が負った業さえも感じさせられます。物語の底流にある雰囲気は、どこか中里介山の『大菩薩峠』にも似ていました。

吉村昭の小説『熊嵐』などが好きな方は必読の書です。

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